イケメン御曹司に独占されてます
ハッとして目を開けると、心配そうな私を覗き込む顔があった。
池永さん……?
眼鏡をかけていない見慣れない顔は、ドアの隙間から少しだけもれた光の逆光ではっきりとは認識できない。
体中がびっしょりとかいた冷や汗で濡れて、その上泣いてしまっていたのか、しゃくりあげるように喉が引きつっている。
言葉を吐き出そうとしても、ただ唇と喉が震えるだけだった。
「水を飲もうと思ってこっちにきたら、お前の泣き声が聞こえて……」
ベッドの端に腰掛けた池永さんが、心配そうに言いながら涙を拭う。
あれから、この部屋に宿泊予定だった会長——池永さんのおばあ様は家に帰ることになり、部屋が無駄になるからとの鶴のひとこえで、私と池永さんははそのままここへ泊まることになってしまった。
本当なら男の人とホテルに泊まるなんてとんでもないことだけど、ここにはベッドルームが二つもあり、それに池永さんひとりを残して帰ることもなんとなく躊躇われて、私はその言葉に従った。