イケメン御曹司に独占されてます


昨日、私と拓哉さんが薔薇のベンチで話しているのを目ざとく見つけた池永さんは、また『加奈子が待ってるぞ』と拓哉さんを追っ払ってしまった。

露骨に嫌そうな顔をした拓哉さんを鋭い目つきで威嚇すると、拓哉さんは拓哉さんで王子様フェイスに似つかわしくないどす黒いオーラを撒き散らし——従兄弟同士だというのに険悪なふたりの空気には、何か特別な理由があるのかもと思ってしまう。


それから私と池永さんは、花に囲まれたベンチに座って色々な話をした。
この薔薇は池永さんのお母さんが子供の頃から大切にしていたということ。
池永さんのご両親は小学生の時に事故で亡くなり、それ以降母方の実家であるこの家に引き取られ、おばあ様とふたりで暮らしていること。


パーティのあとは池永さんの家で夕食までご馳走になってしまった。池永さんと会長——おばあ様と私と。ふたりとも普段は忙しく、食事を一緒にとることも少ないそうで、そんな家族の時間を私が邪魔していいのか、なんて心配した私の頭を池永さんがまた撫でて。


大した意味は無いのかも知れないけれど、池永さんのスキンシップにイチイチ反応してしまう私の心臓は、もうパンク寸前だ。




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