イケメン御曹司に独占されてます
「ねぇ、ホントに大丈夫なの!?」
心配そうに私の腕を抱えた田口くんが、ペットボトルの水を渡してくれる。
「体調悪かったんじゃない? ごめん、なんだか無理やり誘ったみたいで」
「ううん、大丈夫だよ。ちょっとフラフラするだけで。お水飲んでしばらく休んで、今日はもうタクシーで帰るから」
あれから、田口くんに連れられてバンドのメンバーや音楽関係の人がいるお店に合流した。
外見こそ派手だけど、話してみれば皆純粋で優しい感受性の豊かな人たちばかり。普段自分の知らない世界も物珍しくて、ついお酒も進んでしまった。それでも、アルコールがあまり入っていないカシスソーダを二杯ばかり飲んだだけなのに。
少し離れた場所から、田口くんを呼ぶ友達の声がする。先に行ってて、と返した田口くんが、私の腕を抱えたまま歩き出した。
「田口くん、お友達待ってるよ。私はひとりで大丈夫だから」
「ダメだよ。もう遅いし、タクシー乗り場まで送ってく」
外見は変わっても、中身は高校時代と変わっていない。昔から真面目でどんな人にも優しい田口くんは、皆の人気者だった。
「ダメだって。これから仕事関係の人に会うんでしょ。今が大事な時だって、他のメンバーの人言ってたよ」
「でも……」
「大丈夫。大通りに出ればタクシーいると思うし、ここからすぐだから。それにもう酔いも冷めてきたよ」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫! 次のライブ、必ず行くから、日にちが決まったら絶対教えてね!」
「分かった。……じゃあまた連絡するね」