イケメン御曹司に独占されてます
最後まで心配そうに私を振り返る田口くんを見送ると、私はヨロヨロと歩き出した。

そんなに強いお酒を飲んだわけじゃないけれど、連日の睡眠不足からかいつも以上に足にきている。


気をつけて歩かないと酔っ払っていることがバレてしまいそうで、私は注意深く足を踏み出した。


時刻は既に十一時を過ぎていて、メイン通りから外れた路地には人影はまばらだ。


早く大通りに出て、家に帰ろう。


急に心細さを感じて歩みを速めた時、不意に背後から腕を掴まれた。
馴れ馴れしく強引に体に触れる嫌な感覚に、ドクリと心臓が大きく波打つ。


「かーのじょ。ひとりでフラフラしちゃって、大丈夫〜?」


「ホントホント、そんな酔っ払ってちゃ危ないっしょ。俺らが送ってってあげる」


ぎょっとして顔を上げると、さっきの田口くんとは違う意味で違う世界の、人相の悪いふたり連れに両脇を固められている。
途端に酔いが冷めて、頭がはっきりした。足早にその場を立ち去ろうとする私の腕を、両方から掴まれる。


「は、離して下さい!!」


「やだな〜。大声出さないでよ。これから俺らとちょっと遊ぼうって言ってんの。彼女も遊び相手探してたんでしょ? こんなところに、ひとりでさ」


ハッとして周囲を見渡すと、酔ってぼんやりしていたせいか、大通りとは反対の方向に歩いてしまっている。
辺りは色とりどりのネオンが輝く、いかにもいかがわしさの漂う場所だ。
顔面から血の気が引き、恐怖感と危機感で体がこわばっていくのを感じる。
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