イケメン御曹司に独占されてます
「……おまえ、いい加減にしろよ」


そう低い声で囁かれて体を引き上げられた。掴まれた腕に顔を上げると、そこには——。


「お兄さんさぁ、その子俺たちと今から遊ぶから、横から持ってかれると困るんだよね」


池永さんの背後に庇われた私の前には、これ以上無いくらいガラの悪い男ふたりが、ギラギラした目つきでこちらを睨んでいる。
さっきは近すぎてわからなかったけど、その極悪な目つきはかなりのレベルだ。
こんな人たちに絡まれてたのか、と今更ながら恐怖で体がすくむ


「そっちこそ、これに余計な手出しはやめてくれ。すでに俺が教育中だ」


「はぁ? 意味わかんねぇけど?」


「お兄さんさぁ、俺らもこのまま黙っては引き下れないでしょ。ねぇ?」


急にふたり組の発する空気が変わる。池永さん越しに見えるこちらを睨みつける眼差しには、殺意にも似た凶暴さがにじみ出て、ざわっと皮膚が泡立った。


「こっちも引っ込みつかないんだよね。どうしてもっていうなら相手するけど、喧嘩ならこっちは年季入ってるよ。怪我しないうちにその子置いて行きなよ。……って、そんな気全然ねぇってツラだな」


楽しそうに唇の端を上げた男の表情には、狂気にも似た微笑が宿る。
怖い。何よりも池永さんが傷つけられることが怖くてたまらない。
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