イケメン御曹司に独占されてます
お礼を言おうとした私の目を見据えながら、苛立ったように池永さんが上着を脱いでネクタイを緩めた。


そして私から目を逸らさないまま、ベッドに膝をついた池永さんに肩を押されて体重をかけられる。
弾力のあるマットレスに押し付けられて、体が沈んだ。
突然のできごとになんの反応もできない。


「あんなのに捕まってどうするつもりだった? 一体全体、お前って何なの? ああいうのふたり、一度に相手できる女なわけ?」


「ちが……」


上から見下ろされる、苦痛に歪んだ表情。その眼差しには痛みすら感じられて……。
こんなに苦しげな池永さんを見たのは、初めてのことだ。

苦しくて、胸が痛くて。言葉を失う私とは裏腹に、眼鏡の向こうにある綺麗な瞳が苛立ったように細められる。そして次の瞬間、揺さぶられるように手加減の無い力が肩にかかった。


「……それなら俺の相手もしろよ。あんなのふたり相手にするより、よっぽど簡単だろ」


冗談みたいなセリフを吐く池永さんの瞳は冗談じゃないくらい鋭く光って、眼鏡の奥のその冷たい炎に、決して触れられないほどの熱を感じる。
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