イケメン御曹司に独占されてます
そんな私を見た池永さんの手から力が抜けた。
解放された手が、無意識に池永さんの頬に触れる。
すべすべした、冷たい頬に。


「お前、なに……」


驚いて見開かれたあと、ゆっくり細められる綺麗な瞳。
日本人離れした色だと感じるのは、薄暗い証明のせいだろうか。
何故だか懐かしくて、切なくて、目が逸らせない。息をすることすら忘れて、見つめることしかできない。
池永さんはそんな私を、ただ黙って見つめる。

そんな息苦しい時間がどれくらい続いただろう。
やがて短いため息をついた池永さんが、頬に触れている手を強く握って引き離した。


「いい加減にしろ。怖い目にあって気が動転してるんだろうが、これ以上は状況的に本気で危険な領域だ」


上から見下ろされる真剣な表情は、見たことない男の人の顔。


「あんまりお前が無自覚だから腹が立って……だけどもういい。お仕置きは終わりにする。……だから、少し落ち着け」


冷たい口調とちょっとうんざりした顔。嫌われた? 体中に痛みが走った次の瞬間、いきなり強い力で抱きすくめられる。
ふたりともベッドの寝転んだまま、池永さんの腕に頭を抱えられて——。
せっかく静まりかけた心臓が、またどくどくと音を立てる。
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