イケメン御曹司に独占されてます
「あ、あの……」


「お前が、人通りのない場所で金髪の男と一緒にいるのを見たって佐藤さんから連絡を貰って……。慌てて飛んできたら話とは違うタチの悪そうなのに引っかかってるし。さっきの相手は、本当にタダじゃ済まない相手だったんだぞ。ちゃんと分かってるのか?」


頭のてっぺんには池永さんの顎。抱きしめられた胸に顔を埋めるように押しつけられて。息が苦しいのは、たぶん溢れ出して行き場のない想いのせい。


「……無事だったんだから、今回はいい。でもこれからはもっと気をつけろ」


そう言いながら腕の力が緩んだら、今度は髪を撫でられて——この状態、まさか腕枕というやつでは!?

さっき、池永さんに触りたいと悲痛なくらい思っていたけれど、ここまで大それたことは望んではいない。こんなの、刺激が強すぎる。

私が想像していたのは、せいぜいそっと頬に触れるとか、軽くハグされる程度のことで、ここまでの深いスキンシップには、正直なところまだ心がついていかない。
ドキドキしすぎて……心臓が破れてしまう。


「あの……。これはちょっと、くっつきすぎなんじゃ……」


涙声でようやくつぶやくと、池永さんはフンっ、と素っ気なく鼻を鳴らした。


「お前が泣くからいけない。……俺にはトラウマがあって、だからこうやって抱きしめてしまうんだ」


「トラウマ……?」
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