イケメン御曹司に独占されてます

フロアに戻ると、外出先から戻った池永さんが既に席に座っているのが目に入る。
今日は直接外出に出ていたから、あの週末から会うのは初めてのことだった。


「お疲れ様です」


「あぁ、お疲れ」


パソコンの液晶に向かっていた視線が私に注がれると、眼鏡の奥の瞳が僅かに細められる。


それは通常不機嫌な時にする仕草だけど、今のは明らかに優しくほほ笑みかけられたそれだった。


「週末はゆっくり休めたのか」


くるりと椅子をこちらに向けて、何かを考え込むように綺麗な指が顎に添えられる。
長い人差し指が手持ち無沙汰に唇を触って——半端なく麗しい構図。
否応なしに大きくなる心臓の音が、池永さんに聞こえませんように。


「はい。土日ともゆっくり過ごして、寝不足は解消しました」


「そうか。ならいい。仕事は必要以上に抱え込むな。無理だと思ったら早めに報告しろ」


「はい。……ありがとうございます」