イケメン御曹司に独占されてます
私の言葉に、電話の向こうでお父さんが驚いた気配が伝わった。


『そうか。それならいい。この間はずいぶん幼稚なことを言っていたから心配していたが、どうやら杞憂だったようだな。……いい先輩なんだな、池永さんは』


安心したように笑ったお父さんの目の皺が、心の中に浮かぶ。
そして『時間が出来たら帰ってきなさい』と言い残して、電話が切れた。


なんだったのかな、今の電話は……。そう思ってスマホの液晶を指で辿る。と——。


突然の高い電子音を残して、急に画面が真っ暗になった。


「えっ!?」


何度電源を入れても、〝電源オフ〟の画面が僅かに表示されてはまた消える。
確かにここのところ、やけに早く充電がなくなると思っていたけれど、まさかこんな大切な日に電話が使えなくなるなんて。

ひどいよ神様。こんな一生に一度あるかないかの大事な日に……。

私は呆然と手の中のスマホを見つめる。

とにかくここで池永さんを待とう。
もうそろそろ待ち合わせの時間。大丈夫、ここで待っていればきっと会えるはずだ……。








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