イケメン御曹司に独占されてます
「そんな……。私、大したことしたわけじゃ……」


「お前が嫌じゃ無ければ、是非来て欲しい。先方はお前に会えるのをとても楽しみにしているらしいし……。俺も、お前に会えると嬉しい」


こんな風に甘い言葉を突然放つことも、あのキス以来、時々ある。


「分かりました。私で良ければ、お伺いします」


騒ぐ胸をなだめながらそう答えると、ホッとしたように微笑む瞳は優しさに満ちていて、私はわけもなく泣きたくなってしまう。


「……どうした? 俺と別れるのが寂しいの? それなら、部屋に寄っていこうか?」


冗談めかした言葉に似合わない、真剣な瞳で言われるから、更に涙が溢れてくる。


「なんで泣く? ……もしかして俺を誘惑してる? 泣いたら抱きしめるって言っただろ?」


そう言って強引に腕を引き寄せる、優しいけれど強気な瞳。

泣かなくったって抱きしめるくせに。
池永さんの不可思議なトラウマは、中々治らない。
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