イケメン御曹司に独占されてます
予てから準備していた、大きなプロジェクトのプレゼンが間近に迫った。
頼まれていた資料作成もいよいよ山場を迎え、作業は最後の調整に入っていた。
今日も私はひとりオフィスに残り、スライドで表示する財務資料の確認をしている。


「どうも、いまひとつインパクトに欠けるよね」


パソコンの前で頬杖をつき、ふうっとため息をつく。と、背後に人の気配を感じて、慌てて振り返った。


「あ……」


「福田さん、お疲れさま」


そこには同期の広瀬さんがいる。広瀬さんとは、リフレッシュコーナーで飲み物をこぼされて以来、話はしていなかった。
……お互いに避けている、という感じで。


「今日も遅いね。……さすが地獄の第三営業部。やっぱり大変だ」


広瀬さんは私のデスクの上に紙コップを置くと、隣の池永さんの席に座る。


「これ、こないだダメにしちゃったから、買ってきた」


湯気の中身はエスプレッソ。驚いた顔で見つめると、広瀬さんが気まずそうに視線を落とす。
< 194 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop