イケメン御曹司に独占されてます

「こないだはごめん。なんかさ、何もかもが羨ましくて。福田さんのこと」


意を決したように視線をこちらに向けると、もう一度「ごめんなさい」と頭を深々と下げる。


「私、池永さんと同じ大学でさ、就職活動の時、ＯＢ訪問で池永さんに初めて会って。まぁ、一目惚れってやつですよ」


不意に表情を緩めた広瀬さんが、自嘲的な笑みを浮かべる。


「絶対同じ部署に配属してもらって、仕事でもプライベートでもパートナーになってやるって。不純な動機で就職して、希望も出したのに、結局ダメで。それで、なんで福田さんなんだろって逆恨みしてたの。本当にごめん。それにあの時も……。手、大丈夫だった？」


「うん。自動販売機のコーヒーだもん。やけどもなにも無いよ」


そういう私に、広瀬さんがホッとしたように笑った。


「あの時、池永さんが突然現れて、本当にびっくりした。……よりによってってなんで今、なんて卑怯なこと思ったけど、実はあのあと、池永さんに呼び出されて、怒られたの」


「え！？」


そんなの初めて聞く話だ。きっと情報通の七海子だって知らない。