イケメン御曹司に独占されてます
「萌愛(もえ)も希望の部署に配属になると良いね。経理部、だっけ?」
「うん。私、結構計算得意だから」
大学では英文科に在籍していたけれど、授業の合間に簿記検定の資格も取った。それも誰もが持っている三級ではなく、二級だ。
この資格を取るのに、私は大学時代にかなりの努力をして、三度目の受験でようやく合格を勝ち取った。
文系女子の就職が難しいといわれるこのご時世に、こうして一部上場企業に入社を許されたのも、こうした自分の努力が実ったからだと思っている。
「経理部ねぇ……。だけどさ、管理部門ってあんまり男の人いないよ? 萌愛彼氏いないんだし、あんまり出会いって意味じゃ期待できないかも」
七海子が綺麗に巻いた髪を指先でくるくるもてあそびながら小悪魔のように微笑む。
すると、私たちの前の席にいた野口くんが慌てたように振り返った。
「なんだよ、配属前からもう男の心配?」
拗ねたように七海子を見る野口くんに、七海子が優しい微笑みを返す。