イケメン御曹司に独占されてます
その後、結局池永さんはオフィスに帰ってこなかった。

就業時間を過ぎ、資料作りで溜まっていた仕事を片付けるためにフロアに残っていたものの、あれから私の周囲はとても仕事ができる状態ではなかった。


「ねぇねぇ、今日のあれ、どう考えたってあのふたりって……」


「ね〜!! 噂は本当だったね〜。 だけど西連寺さん、何があったのかな。あの人が取り乱すなんて、珍しいよね」


「すごく辛いことがあったんだよ、きっと。そういう時って、やっぱり好きな人に会いたいもんじゃない? だけどさ〜、ひと目も憚らずああやって受け止めてくれるなんて、やっぱり秀明さんって素敵!。あぁ、私も秀明さんに受け止められたい〜」


そしてその話の矛先は、私にも向けられた。


「福田さん、西連寺さんともよく話してるし、本当はあの二人のこと知ってたんじゃないの?」


「ねぇねぇ、あのふたり、もう結婚の話とか出てるの?」


先輩たちに詰め寄られて、「私、何も知りません」と言って逃げるものの、移動する先々にいる女子社員の皆さんに詰問され……。

人がいなくなるまで仕事をするのは無理だと判断し、一時間ほど前から、私は人気の無い屋上のベランダでしゃがみこんでいる。
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