イケメン御曹司に独占されてます
ひとしきりおしゃべりを楽しんだあと、おばあ様と安西先生をテラスに残して、私と加奈子さんは薔薇のアーチへとやってきた。

ここはこの間のランチパーティで、秀明さんがお母さんの思い出を話してくれた場所だ。


「萌愛ちゃん、秀明くんのことなんだけど……。私の話を聞いてくれる?」


何かを決心したような加奈子さんの言葉に、胸がドキリと波打った。
けれど、もう逃げることはできない……逃げたくない。

身分違いとか、釣り合ってないとか、本当はそんなことは関係無かった。
ただ私が池永さんを好きで、その気持ちを池永さんに伝える勇気が無かっただけだったんだ。
逃げていただけだから。

だから例え加奈子さんと池永さんにどんな秘密があっても、ちゃんと受け止めなきゃ——。

そう覚悟を決めた私が聞いた言葉は、想像していたこととは、全く違っていた。



「萌愛ちゃん、あの時、私が会って話したかったのは、秀明くんじゃなくて拓哉なのよ」


「えっ?」


「あの時、突然〝婚約は破棄する〟って一方的なメールを送りつけられてね。それで私、あんなに取り乱しちゃったの」


「だって、あの時秀明さんが加奈子さんを抱きしめて……」
< 228 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop