イケメン御曹司に独占されてます
「こ、来ないでっ」
池永さんに向かって叫んだら、公園中に緊迫した空気が漂ってしまった。
子供たちやお母さんまでもが、驚いたようにこちらをふり返っている。
だけど、こんな状況、もうどうしようもない。
それでも追ってこようとする池永さんに向かって手を振り回すと、バランスを崩して体がぐらりと揺れる。
「危ないっ」
「キャーッ」
私の様子を見た子供たちから、悲鳴が上がる。
青ざめた顔をした池永さんが、そろそろと後ずさりして地面に降りた。
「萌愛、話を聞いてくれ!」
「話ってなんですかっ。人事に手を回して私を第三営業部に配属させたこと? それとも……それとも、池永さんがターくんだったっていうこと!?」
呆然とした顔で私を見上げる、その瞳が太陽の光を含んで薄くなる。私が大好きだった、いつまでも見ていたい綺麗な瞳。
胸が締め付けられるように痛い。
「全部……嘘ばっかり……。お父さんもお母さんも知ってたんでしょう? 源兄ちゃんだって、おばさんだって! みんな揃って私を騙して……」
「騙してたわけじゃないんだ……。ただ、萌愛はショックで忘れていることも多かったから、だから余計なことを思い出させて、また悲しい思いをさせたくなくて。皆が萌愛を守ろうとして……」
「守ろうとなんてして欲しくないっ。ちゃんと、本当のことを教えて欲しかった……」