イケメン御曹司に独占されてます
——萌愛! 


唸り声をあげて襲いかかる犬から、覆いかぶさるように私を庇うターくん。


もがいたむき出しの肩に、有刺鉄線が深く食い込む。
唸り声をあげてターくんの腕に噛み付く興奮した犬。振りほどこうとしたターくんから離れず、凶暴に首を振る。それでも、ターくんは微動だにしなかった。

痛くて、怖くて。
ターくんが傷つけられるのが怖くて。
泣き叫ぶ私。私の体に覆いかぶさったまま固く動かないターくん。


記憶が今に引き戻される一瞬の刹那、平衡感覚が失われて体がぐらりと揺れる。


「キャー」


「危ない!」


バランスを崩したまま、鉄のパイプにかけていたパンプスがつるりと滑って——。

滑り落ちるように落下した私は、そのまま大きな腕に抱きとめられていた。

この感覚を覚えている。
絶対に抱きとめる、という強い気持ちが、私を抱く腕から伝わってくる。


——大丈夫、僕が受け止めるから。
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