イケメン御曹司に独占されてます
「やっぱり似合ってるな、そのドレス。一目見たときから、お前に絶対に似合うと思っていた。まぁ俺の見立てだから、当然だけどな」


「え? それってどいういう……」


もっと追求したい私を遮るように、池永さんと同じくタキシード姿の野口くんが七海子の手からグラスを取ると、残りのワインを飲み干した。
その当たり前な仕草に、ちょっとドキっとする。


「あー、緊張した!! ほんと、企業のトップクラスばっかりですよね!!」


今日拓哉さんのゲストとして招かれた野口くんは、池永さんに連れられて名だたる面々と名刺交換をして回っていた。


「野口はうちの新入社員で一番の将来有望株だからな。取引先に売り込んでおかないと」


その言葉に嬉しそうにする七海子と、照れる野口くんを見守る池永さんの横顔は優しくて、温かな気持ちが胸の奥からじんわり湧いてくる。


池永さんにお礼を言うと、ふたりで飲み物を探しにいってしまった七海子と野口くん。
ひとり残された私は、池永さんの妖しい視線につま先から頭の先まで晒される。


「あの……」


「とても似合ってる。これならそんなに露出も無いし。——大体、この前のは少し肌を出しすぎた」


先日、パーティで着たドレス。肩の傷があらわになってしまって……。確かに、あんなドレスは、私が着るのは見苦しい。
私の心を察したように、池永さんがそっと肩を抱く。


「そういう意味じゃ無い。他の誰にも、お前の肌を見せたくないって意味。……俺だってまだ見せてもらってないし」


耳元で囁く声は、五感を鈍らせるほど甘い。





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