イケメン御曹司に独占されてます
「や、やります……っ」
「いいから、手、もう少し冷やしてろ」
有無を言わさない口調で手出しを阻まれて、仕方なく大人しくしていると、帰り支度を済ませた池永さんが黙って私のバッグを取り上げた。
「あのっ……」
「……」
慌てる私を無視したまま、池永さんはエレベーターホールへ向かう。
ボタンを押して気まずい沈黙に耐えていると、視線を前に向けたまま、不意に池永さんの唇が動く。
「飯、食って帰るから、付き合え」
「え……」
「お前もまだなんだろ。……何がいい?」
不意に落とされた視線が無防備で――。
「……オムライス」
池永さんの優しさが嬉しくてようやく呟いたら、うつむいた横顔に微かな笑みが浮かぶ。
さっき、広瀬さんたちに意地悪されても平気だった涙が、少しだけ滲んだ。