イケメン御曹司に独占されてます
「まぁまぁ、福田も野口もこっちに来なさい」


部長に呼ばれ、暫く社会人としての振る舞いについてお言葉を頂いたあと、飲めないお酒を飲むハメになってしまう。
元々強くない上、ろくに食事も採れないままに流し込むアルコールは、想像以上に身に堪える。

そしてそのうち、次第に入り乱れる宴席に、野口くんとも離れ離れになった。
さりげなく末席に移動して——ようやく自由になった私は、そっと部屋を抜け出した。


化粧室で休憩したあと、スマホをチェックする。
結局池永さんは予定の新幹線に乗ることができなくて、まだ合流できずにいた。

もう新幹線には乗ったのかな。
池永さんがいないことを心細く思ってしまう自分に驚きながら、それでもやっぱりスマホの着信を気にしてしまう。


第三営業部の中心はやっぱり池永さんで、姿が見えないとさらにその存在感が際立ってしまうのが不思議だった。

心の中で、誰もが池永さんを待ってる——そんな気持ちにすらさせてしまう、不思議な存在。


「秀明がいないと、そんなに心細い?」
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