イケメン御曹司に独占されてます

「違うから!!　無いから!!　絶対!!」


力の限り否定すると、思いの外大きくなった声がフロアに響き渡る。
何事かと視線を上げた第二営業部のお局、村井さんがチラリと眼鏡を光らせた。


「しーっ……。声でかいよ、お前」


「ごめん……。でも野口くんが変なこと言うから」


慌てて声をひそめてうなだれた私に、野口くんがあきれたように頬杖をついて言った。


「だけどあの状況じゃ、そう思ったって仕方無いだろ？」


「岡田さんが酔ってて……絡まれてた私を、池永さんが助けてくれただけだよ」


苦し紛れの言い訳を弱々しく吐くと、野口くんは意地悪に目を細めて顎を上げた。

「岡田さん、酒飲まないよ。あの時だって酔ってたとはとても思えない。それにいつも感情の起伏がない岡田さんと秀明さんがあんな剣幕、初めて見たし。つか、大体あのふたり、ほとんど絡んでんの見たことないし」