イケメン御曹司に独占されてます

滝川さんたちのいるオフィスは、歩いて五分ほどの場所にある。
国内最王手の鉄鋼ホールディングの中枢だけあって、高層階にあるオフィスからは、都心の風景が見渡せる。


普通ならその眺望を楽しむところだけど、今はそれどころでは無かった。


「あぁ、来たね、秀明。……そちらは？」


足早にオフィスに入ると、何人かの女子社員を従えた滝川さんが、鋭い視線を私に投げかける。



「僕のアシスタントで、今年入った福田です」


「あぁ」



滝川さんには、配属になった当日野口くんと一緒に挨拶に来て以来だ。



「おはようございます」



滝川さんは頭を下げる私を一瞥し、そのまま池永さんに視線を移す。


「秀明。昨日のオーダー、一体どういうことかねぇ？」


「申し訳ありませんでした。完全なこちらのミスです」