イケメン御曹司に独占されてます
「まず、……あなた。福田さん、だった?」
「はい」
「このオーダーは橋梁用、つまり橋の材料。それも本州と島を結ぶ巨大プロジェクトだ。うちだけではなく、他の鉄鋼メーカーも参入している大きな公共工事だということは理解しているね?」
「はい」
橋梁用の鋼材はほとんどがオーダーメイド。細かな計算がされた設計図のもと、必要なパーツを一つ一つ確認し、特注する。つまりは規格外の鋼材で、世界にひとつしかない部品、ということになる。
「橋梁用の鋼材の場合、既存の商品では代用ができない。
だから少しでもオーダーと違うものを作ってしまったら、その段階で工事が止まる。
工期の遅れは人件費や運送費に損害を与えるばかりか、ゼネコンや協力会社、ひいては我社の信用に傷をつける。
……一ミリでも違うものを使えば安全面でも大きな不安材料になる。
小さな鋼板一枚でも、発注には大きな責任がかかってくることを自覚しなさい」
「はい。申し訳ありません」
「……反省しているようだから、今回はいい。いつもはこんなミスは無いようだし。そうだね、桜井?」