白いオレンジ


「何か欲しいのあるの?」

「んー、コート欲しいんだよね。春物の」

「いいね。まだ寒いもんね」

「薄いグレーのが欲しいんだよね」


何個かお店を回ると思っていたようなテーラーコートを見つけた。

「試着してみなよ」

店員さんにお願いして試着してみると、イメージ通りだった。


「とってもお似合いですよ」

「うん。ののちゃんにぴったりだ」

褒められて、なんだか恥ずかしくなる。


「うん…欲しいな…」

そう思いつつ、値段を見ると予算より三千円も高い。


「………」

「お買い上げなされますか?」

「もうちょっと店内見て考えます。ありがとうございます」


この値段を即決出来るほど生活に余裕はない。


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