白いオレンジ


お会計は陽向がしてくれた。

「ありがとう。奢ってくれて」

「美味しかった?」

「うん!」

「なら良かった」


駅に着くと陽向は繋いでいた手を離した。


「じゃあね、ののちゃん」


驚いて思わず「えっ」と声が漏れた。


「今日はうちに来ないの?」


「何、ののちゃん、寂しいの?」


「そ、そういう訳じゃないけど」


咄嗟に出た言葉がこれだから、わたしは可愛くない。


「また明日ね、ののちゃん」


陽向が笑う。


寂しく思いつつも「じゃあね」とわたしも笑った。


これから陽向は自分の家に帰るのだろうか?


それとも、別の誰かの……


考えを掻き消すように、早足で帰った。



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