白いオレンジ


「まっちゃん教科書見せてー」


陽向くんの隣の席になってから、陽向くんとよく話すようになった。


そしていつしか、彼の柔らかそうな茶髪を見つけると思わず目で追っている自分がいた。

しかし、これは決して恋ではない。

不思議な男の子について詳しく知りたい…、では恋のように聞こえてしまうか。

小学生の自由研究。未知の生物を観察するような、そんな感情である。


その上で気付いたことがあった。

それは陽向くんにとっての特別な女の子。


沢山の女の子と会話しているのを見るけど、1人だけ他とは違う子がいる。


「ののちゃん、今日部活ある?」

「ないけど」

「じゃあ一緒に帰ろうよ。俺も今日部活ないんだ」

「今日水曜日だよ?」

「そうだね?」

「バスケ部の休みは火曜と木曜でしょ?」

「そうだっけ?まあオレいつも自主休暇だから、関係ないや」

「サボり魔。部活いきなさい」

「ののちゃんが来てくれるなら行くー」


野々村さんと話している時の彼は本当に嬉しそうに笑うのだ。

他の人と話している時は取って付けたような笑顔を見せるのに。


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