白いオレンジ
「もっかいキスして」
「どうしたの美香ちゃん。欲求不満なの?」
「ケータイ弄ってないでさー、こっち向いてよ」
沈黙が少し続いてこれ以上話を聞いてるのはいけない気がして、
携帯を探すのは部活が終わってからにすることにした。
教室から離れようとすると…
「陽向…好き。あたしのこと、彼女にしてよ」
美香ちゃんの声が聞こえて、悪趣味だと思いつつも、聞き耳を立ててしまった。
「オレが彼女作らないのは知ってるよね?
そういうこと言うなら、美香ちゃんとはもうこういうことしない」
「やだ!嘘。今の嘘!だから…そんなこと言わないで」
「………」
「ねえ、今日さ、お母さん帰り遅いんだよね。うちに来てよ。続き…しよ」
耳を疑った。
美香ちゃんの言葉が何を意味してるかなんて想像はつく。
私の中の陽向くんのイメージが変わっていく。
「いいよ」
陽向くんの静かな声が聞こえて、思わず走った。
逃げるようにその場を離れた。
眩しくも感じた陽向くんのイメージが暗い闇に包まれていく。