白いオレンジ
「窓側の席だしー、隣のまっちゃんとは友達になれたし、今日のくじ引きは当たりだなー」
私の左隣となった彼、蓮嶋 陽向(ひなた)くんは映画にするなら正に主役って感じの男の子だ。
こんな私にも態度を変えず、いつも明るい陽向くんの周りにはいつも人が絶えない。
少女漫画なら、陽向くんはヒーローだ。
そんな陽向くんの相手役を私がキャスティングするなら、女子の中で一番目立つ、完璧美人の美香ちゃんか…
「それに、前の席は大好きなののちゃんだしね」
目立つことはなくても、美人で、どこかミステリアスな雰囲気を持った、野々村 雪乃(ゆきの)さんとかがいいと思う。
「ののちゃんって呼ぶの、やめてくれる?」
陽向くんの前に座る野々村さんが、振り返って言った。
陽向くんは女子を独自のあだ名を付けて呼ぶ。
クラスの中心にいる美香ちゃんとか、由利ちゃんはそのまま名前で呼んでいるけど、野々村さんとか、私みたいなクラスの中心からちょっと出てる人にあだ名を付けたがるのだ。
「そんなこと言わないでよ、ののちゃん。オレさののちゃんのあだ名、クラスで一番気に入っているんだよねー。
篠原さんの、のはらちゃんよりいい。一番ぴったりする」
私からすれば、野々村さんは「ののちゃん」なんてキャラじゃない。
野々村さんは、雪乃という下の名前がぴったり合うような容姿端麗美人。
雪みたいに白い肌に真っ直ぐで綺麗な髪。
クラス一番の美人は美香ちゃん、なんて言われてるけど、私は野々村さんだと思う。