白いオレンジ
1枚の、プリンターで印刷されただけの空白が目立つプリントを見る。
「あ、まっちゃん白紙じゃん」
一番上に進路希望調査と書かれたその紙は3日前に渡されて、今日提出のものである。
「陽向くんは、なんて書いたの?」
ふと聞くと、陽向くんは表情筋豊かに笑って答えた。
「第1希望、料理人。第2希望、建築士。第3希望、商店街の看板娘、だよ」
「いや、おかしいでしょ」
笑いを堪えつつも、笑みが溢れた。
「なんで?進路希望だし、合ってるじゃん。これがオレの人生の進路だよ?」
「目標バラバラすぎて、本気が伝わってこない」
「そんなことを言うまっちゃんには何か人生の進路希望があるの?」
「え…、えと…」
夢は…ある。
16歳の子供みたい動機の、夢。
まだ誰にも言ったことのない、夢。
「……教えない」
結局、誤魔化してしまった。
「それは残念…。でもいつか、教えてね」
陽向くんは私には眩しい。
教室の隅、日陰のような場所で過ごしてきた私には直視できないような、眩しさがある。