白いオレンジ
大学生になって、独り暮らしを始めた。
去年の昨日、引っ越しをしたのだから、今日でこのアパートも2年目なのかと、コツコツと音のなる鉄の階段を上る。
深夜0時。日付けも変わったから、もう今日が昨日なのか…
なんて、
「おかえり」
わたしの部屋の前で座っていた影が立ち上がって言った。
最近毎日のようにドアの前で待っているものだから、驚かなくなってしまった。
「ただいま…、じゃないよ、なんでいるの」
そう言いながら、すぐにドアの鍵を開ける。
わたしの照れ隠しの言葉を、彼はもう聞き飽きているのだろうか。
ドアを開けて部屋に入るとすぐ、
「会いたかったよ、ののちゃん」
甘い声で、わたしを呼んで
甘いキスをくれる。
ガチャンと、後ろのドアが閉まる音がした。
「陽向ー…」
名前を呼べば静かに笑う彼。
「今日はもう待てない。このまま…しよ」
耳元で囁く陽向の声が全身に響いた。
胸の鼓動が早くなる。