今宵、君の翼で


私はシホさんに頭を下げて、その場を後にした。

その時、右ポケットに入れていたスマホが鳴り出した。


もしかして……翼!?



急いで取り出してみるとディスプレイには浅野さんの名前が。


「はい……」


『美羽ちゃんどーしたの? 元気ないね?』


「いえ……」


『彼氏くんと何かあった?』


「彼氏というか……色んなことが重なってちょっと……」


『そーいうときはすぐ頼ってって言ったじゃん、今どこ? 迎えに行くよ?』


私、思わず電話とったけど……浅野さんとの関係を切ろうと思っていたんだ。


翼に隠し事はしたくないから。

いくらあんな態度を取られたとしても、もう他の人に甘えたくない。


もう誰も傷つけたくない。


「いえ。大丈夫です」


『そんなに気を使わないでよ、俺と美羽ちゃんの仲なんだからさ』


「浅野さん……勝手なこと言って申し訳ないんですが……私、やっぱり彼氏を裏切りたくないです」



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