今宵、君の翼で
信じたくない事実
朝目が覚めたら、シホ先輩はすでに仕事に行ってしまったようだった。
だけど、テーブルの上に朝ごはんが置かれていてなんだか胸が熱くなった。
昨夜あんなことがあって傷つけたのに……
シホ先輩はやっぱり優しい。
まだ温かい卵焼きとベーコンを口にしたら、泣けてきた。
昨日の事が全部夢だったら良かったのに。
そして夢の事を翼に話して、『バカじゃねーの』って笑って言ってほしい。
いつもみたいにぎゅーって抱きしめられて、翼の匂いに包まれたい。
せっかく美味しいご飯を用意してくれたのに、全然喉が通らなかった。
私は今日から本当にひとりなんだ。
ひとり……
ひとりで生きていけるの?
考えたら心細くて、泣きたくなった。
でも……生きて行かなきゃ。
もう誰にも頼らないって決めたんだもん。
無理やりご飯を胃に押し込んで、シホ先輩の部屋にあった自分の荷物をキャリーバッグに詰めた。