今宵、君の翼で
新しくて大きなマンション。
高校生の息子にこんな立派なマンション買ってあげちゃうなんて、いったいどんな親なんだろう。
そんなことを考えながらエレベーターに乗り込んだ。
インターフォンを押す手が震えている。
でもここまで来て引き返せない。
ピンポーンと鳴っても、返事がない。
中から声も聞こえないし出かけているのかも。
引き返そうとしたその時……
「ハイ」
それは翼でもなければ、多分一場先輩の声でもない。
女の子の声だった。
胸がモヤモヤする。
「あの……私翼のか、彼女なんですけど……」
一瞬彼女と言っていいのか悩んだけど、私は別れるつもりないもん。
彼女でいいよね……?
すると、インターフォン越しに数人の声が聞こえた。
もしかして近くに翼がいるの!?
しばらくして、玄関ドアが開かれた。
見たことない男の人……
このひとが一場先輩?