今宵、君の翼で
「翼の女?」
少し怖そうな雰囲気に怖じ気つきそうになったけど、私は「ハイ」と返事をした。
「すげー可愛いじゃん。中に入って?」
男の人は玄関のドアを全開にした。
「あの……一場先輩ですよね?」
「そーだけど。なんで知ってんの?」
「大輝に教えてもらいました。翼今いるんですか?」
「もちろんいるよ」
一場先輩のニヤリと笑った顔……信用していいのかな。
不安に思ったけど、私は家の中へ足を踏み入れた。
リビングみたいなところに通されて、ドキッとした。
翼がソファに座ってスマホを見ている。
隣には女の子が座ってて、翼の肩にもたれかかってテレビを見ていた。
この前とは違う女の子……
すると翼の視線が私に向けられた。
「しつけぇ女」
その言葉は冷たすぎて、翼の口から出たものとは思えないくらいだった。