今宵、君の翼で


「翼の女?」


少し怖そうな雰囲気に怖じ気つきそうになったけど、私は「ハイ」と返事をした。



「すげー可愛いじゃん。中に入って?」



男の人は玄関のドアを全開にした。




「あの……一場先輩ですよね?」



「そーだけど。なんで知ってんの?」



「大輝に教えてもらいました。翼今いるんですか?」



「もちろんいるよ」



一場先輩のニヤリと笑った顔……信用していいのかな。


不安に思ったけど、私は家の中へ足を踏み入れた。


リビングみたいなところに通されて、ドキッとした。


翼がソファに座ってスマホを見ている。


隣には女の子が座ってて、翼の肩にもたれかかってテレビを見ていた。


この前とは違う女の子……



すると翼の視線が私に向けられた。



「しつけぇ女」



その言葉は冷たすぎて、翼の口から出たものとは思えないくらいだった。




< 106 / 230 >

この作品をシェア

pagetop