今宵、君の翼で
どうしよう。こういうこと言われるとは予想していたけど、いざ本当に言われるとショックで言葉が出てこない。
「翼~振るならこの子俺にちょうだいよ」
後ろから一場先輩がきて私の肩に手を置いた。
ゾクッと寒気がする。
一場先輩の方を見た翼はすんなり「どーぞ」と答えた。
ズシンと一気に体が重くなった気がした。
翼は本当に私の事なんてどうでもいいんだ……
少しの望みも、粉々に砕け散った。
この場から動けない。
「俺、隣の部屋にいるんで」
そう言って翼は一緒にいた女の子の腕を掴んで、隣の部屋に行ってしまった。
なんだかフワフワした気分で、まるで夢の中にいるようだった。
そう、これが夢ならいいのに。
「あれ? ショック受けてんの? とりあえず座んなよ」
一場先輩にその場に座らされた。
帰りたいのに体が動かない、声も出ない。