今宵、君の翼で


翼はその場にしゃがみこんだ。



「本心だよ」



「違うよ。確かにさっきはもうダメかと思った。本気で私の事なんてどうでもいいのかと思ったよ。でも……こうやって助けてくれたじゃん!」



「……」



そっぽを向いて黙りこくってしまった。


やっぱり何かあるのかもしれない。


「翼……何があったの? この前のお墓参りの日から変だよね? お兄ちゃんの事でなにか……」



「そうだよ」



翼はキツイ眼差しで私を見た。



「え……?」



「美羽の兄貴、事故で死んだんだろ?」



「う、うん……」



「兄貴ひいた犯人……俺だから」




頭の中が一瞬真っ白になった。




え?


犯人が翼って……




「な、何言ってるの? 冗談……」



「冗談なんかじゃねー。あの日大雪だったのに俺はスピードを出してて……信号で止まりきれなかった。それでそん時歩いてたお前の兄貴を……ひいた」



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