今宵、君の翼で
「う、嘘……嘘でしょ!? そんな偶然が……」
翼は私から目線を逸らした。
「わりぃ……本当に。まさか美羽の兄貴だったなんてな。サツに言いたきゃ言えよ。俺は逃げねぇから」
「そん……な……」
その時、私のスマホが鳴り出した。
だけど、そんなことはどうでもよくて。
「電話出れば?」
軽快なリズムの着信音だけが鳴り続けている。
ショックで足が動かない。
「うわっ! こんなとこで何やってんだよ」
着信音が止まるのと同時にやってきたのは四条さんだった。
私たちを見て、呆れた顔をしている。
「美羽ちゃんよぉ~。俺ずっと鳴らしてたんだけど」
だけど私は返事すらできなくて。
声が出ないよ……
「なに? お前らなんかあった?」
「四条さん、こいつのこと頼んでもいい? ちょっと今ショック受けてるから」
「は? どういうことだよ。てかお前もさぁ~」
「俺帰るんで」