今宵、君の翼で



「おいっこの前からなんなんだよ!? 説明しろよ!」



翼は振り返ることなくその場を去って行った。



「なんなんだよアイツ!」


私は全身の力が抜けてその場に座り込んだ。



「え、大丈夫か!?」



四条さんが私の両肩を掴んだ。



「顔色真っ青じゃねーかよ!」



「つ……翼が……」



「え?」



「翼が犯人だったなんて……」



息をするのもやっとだった。



「犯人!? なんだそれ!? とりあえずここじゃ誰が聞いてるかわかんねーし……俺んちに来いよ。あっちに単車停めてあっから」



体も動かず、立ち上がることさえできない。


そんな私を見た四条さんは


「なんもしねーって誓うから。来いよ」


と、優しい口調で言った。



四条さんの気持ちは素直に嬉しい。




この時、誰かといなければ私は壊れていたかもしれない。


もう誰にも頼らずに生きて行こうって自分の中で決めていたのに……


自分の力じゃどうにもならないことってあるんだ。


やっぱり人間はひとりじゃ生きていけないんだね。


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