今宵、君の翼で



四条さんの家の前に来たとき、ふと思い出した。


お兄ちゃんのお墓参りに行く前、翼と四条さんの家に寄ったっけ。


もう遠い昔の事のように感じる。


あの時……お墓に行かなければよかった。


そしたらこんな事実、知らなくて済んだもの。



なかなかバイクから降りない私を、四条さんは不思議に見つめていた。



「ホントになんもしねーから、安心しな?」



そう言ってフッと笑うと、私の頭にポンと手を乗せた。


少し緊張の糸がほぐれたかも。


私はコクリと頷いてバイクから降りた。


大きい門に、広い庭、200坪くらいある家。


どこからもどう見てもお金持ちにしかみえない。


この前は玄関までだったけど……まさか中に入る日が来るなんて。


部屋で待っていると、四条さんが飲み物を持ってきてくれた。



「ココア……」



それはとても熱いココアだった。



「あったかいもん飲んでたら気持ちも落ち着くっしょ?」



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