今宵、君の翼で
四条さんに兄がひき逃げされた事、そしてそれの犯人が翼かもしれないということを伝えた。
話している途中、何度も吐きそうになった。
お兄ちゃんが大雪の中ずっと苦しんでいたのに翼は見向きもせずに逃げたの?
そんなこと、本当に翼がやったんだろうか……
「嘘だろ、信じらんねぇ……翼が……」
四条さんもかなりショックを受けているようで。
俯いたまま、膝の上で拳を握りしめていた。
「私も……信じられないです」
さっきの翼の顔が頭から離れない。
目を細めてすごく辛そうに笑っていた。
そんな顔、見たくなかった。
「あんたは翼の言ってること信じんの?」
翼は私の目を見て言わなかった。
ずっと地面を見つめていて……
ううん。
翼は……
ひき逃げなんかするような人じゃない。