今宵、君の翼で
私は翼の後ろにまたがった。
バイクの後ろ座席に乗ることは何度もあったけど、翼のバイクは座り心地が良い。
「場所どこ?」
「あ、A町方面に行ってもらえる?」
「りょーかいっ」
マフラーも改造しているようで、物凄くうるさい。
みんなのこと起こしちゃうんじゃないかな。
特に陽菜にバレたら怒られるかも。
私たちは爆音と共にアパートを後にした。
翼はPhoenixのメンバーだったりして。
でも信号はちゃんと止まるし、スピードも出さない。
翼の運転は丁寧で、安心して乗っていられる。
スイスイと街中をすり抜け、あっという間に目的地に着いた。
「送ってくれてありがとう。眠いのにごめんね?」
「別に。あんただから送っただけ。他のやつだったらこんなだりぃことしねーし」
「え?」
翼の手の甲が私の頬に触れた。
ひんやりと冷たくなっている。
「美羽が気に入ったってこと。俺の女になんない?」