今宵、君の翼で
「はぁ。でもすげーな……翼が羨ましいよ」
四条さんがハハっと笑う。
「アイツはそんな風に俺の事思ってくれなかったんだろうな…… 」
小さく呟いた四条さんはどこか寂しげだった。
アイツって、シホ先輩のこと?
「四条さんはシホ先輩のことまだ好きなんじゃ……」
「わかんねぇんだよな。俺が思ってても、あいつにとっては重荷になるだけだしな……」
やっぱり四条さんはまだ……
「そんなことないと思います! 何があったのかは詳しく知らないけど……シホ先輩もきっとまだ四条さんに気持ちがあるはず…だってこの前四条さんの話が出たとき、今の四条さんと同じ顔してましたもんっ」
「マジか。いや、でも……もうおせーよ。アイツのことすげー傷つけたし」
四条さんは煙草を持って立ち上がると「一服してくるわ」と言い、ベランダに行ってしまった。
シホ先輩と四条さん、お互い同じ気持ちなのかもしれない。
だったら2人はまた歩み寄ることができるかも。
私もシホ先輩を傷つけてしまったから……
少しでも先輩の役に立つことがしたいと思った。