今宵、君の翼で
しばらくして車のエンジンが止まり、私は外へ出るよう指示された。
空気がひんやりとした建物の中へ入ると、エレベーターに乗せられた。
一緒にいた数人の男たちは何もしゃべらない。
それが余計に怖く感じる。
ガチャ
部屋に入った?
その瞬間、目隠しが外された。
そこは広いオフィスだったけど、昼間だというのに黒いブラインドがきっちり閉められていた。
「ここって……」
「美羽」
そう呼ばれて心臓が飛び出すくらい驚いた。
だってその声は。
「お父さん……」
振り返ると父が黒塗りのソファに座って手を組んでいた。
突然の再会に言葉が出ない。
父とは数か月ぶりに顔を合わせた。
少し痩せたような気がする。
家出する前、父と母は毎日正気をなくしたように泣いていた。