今宵、君の翼で
私は勢いよく事務所を出た。
追いかけられるかと思ったのに、誰も来なかった。
ほら……
その程度なんだよ。
勝手な事言って。
もう二度とあの家には戻らない。
ごめんね……お兄ちゃん。
私はエレベーターの窓から外を見つめた。
溢れてくる涙をぐっと堪えた。
1階に着くのと同時に、四条さんから電話が着た。
「四条さん!?」
『美羽、連絡遅くなってわりぃ! 翼の事わかったぞ!』
「そ、それで!?」
バクバクと心臓が鳴っている。
信じたくないけど、さっきお父さんが翼の証拠を持っていると言ってたから、不安でいっぱいだ。
『やっぱりあの日新年会だったわ! そん時の写メも写真もある! 動画撮ってたやつもいたから! 日付も入ってるし……ばっちり証拠になるぞ!』
パアーっと、目の前が明るくなった。
翼は犯人じゃない!