今宵、君の翼で
「何をおっしゃってるんですか! とにかく奥様を寝室へ運びますよっ」
「うん!」
私は梶原さんと母を抱えて寝室へ向かった。
なんだか軽い気がする。
体も細くなったような……
「奥様は豪壮さんが亡くなってからはもちろんのこと、美羽さんが家出をしてからはほとんど食事をとらなくて……朝に野菜ジュースを少しだけなんて日もあって……」
梶原さんはそう言いながら目頭を押さえた。
そんな……食べてないなんて死んでしまうじゃん!
お母さんの顔を見ると本当にゲッソリしていて色白だった。
私は……なんて親不孝者なんだろう。
お母さんの部屋でまた泣いてしまった。
梶原さんはそんな私の肩にそっと手を置いた。
「今夜はこの家にいてくださいね? 奥様が目覚めた時、きっと喜ばれますから」
私は泣きながら頷いた。
陽菜にも電話でこのことを伝え、私は数ヶ月ぶりに自分のベッドに入った。
部屋は私が出て行った時より綺麗になっていて、掃除も行き届いていた。
私がいつでも帰ってこれるようにしていてくれたんだ。
もっと早く話し合えばよかったな……
そんなことを思いながら眠りについた。