今宵、君の翼で
待合室で梶原さんと2人で待っていると、翼から電話がきた。
「翼!」
『美羽⁉︎連絡ねーし、心配したんだけど。お前今どこにいんの?』
翼の声を聞いてほっとした。
私はお母さんが倒れたことを話した。
気が動転していてうまく話せないし、手がまだ震えている。
『今からそっちに行くから!』
翼はすぐに駆けつけてくれた。
きっとバイクを飛ばしてきてくれたんだろう。
病院の入り口のところで私を見つけると、走ってきて私を抱きしめた。
「お前大丈夫か!?」
ぎゅっとされるとすごく落ち着く。
震えが徐々に治(おさま)っていくみたい。
「忙しいのにごめんね…翼…」
「何言ってんの。そんなこと気にすんなよ!それより美羽の母ちゃんは?」
「今処置室にいて…」
その時、梶原さんが走って私たちのところにやってきた。
「美羽さん、今から旦那様が奥様の容態を診てくださるそうで…」
「そ、そうなんだ…」
先日会った時の父の顔がふっと脳裏をよぎり、怖くなる。