今宵、君の翼で
「君は…」
「こんな大変な時に突然すみません。美羽さんとお付き合いさせていただいてる柊木翼といいます」
「柊木…お前が…」
父の眉間にしわが寄っていた。
私は慌てて
「翼は心配して来てくれたの!」
とフォローしたが、聞いていないようだった。
父は翼の顔をしばらく見つめていて、翼の方も目を逸らさず父を見ている。
「あ…それでお母さんは!?大丈夫なの!?」
私はその不穏な雰囲気を取り払うかのように力のこもった声を上げた。
「今は眠っている」
「そう…なんだ」
「ちょうどいい。お前に話しておきたいことがあったから」
ドクンと、大きく心臓が動き、体がこわばった。
「君も一緒に来なさい」と、父が翼に声をかける。
翼は私の顔を見て柔らかく笑うと、そっと私の手を握ってくれた。
翼がここにいてくれて本当に良かった…。