今宵、君の翼で



案内された部屋は、病院内でも人気がない端の方にある部屋だった。


私達を近くにあった椅子に座らせ、自分も近くの椅子に腰かけた。


そして短く息を吐くと、私達の方を見た。


「まず…美羽に伝えなくてはいけないことがある」


私はゴクッとつばを飲み込んだ。


「な、なに…」


「佐恵子は…母さんは、肝臓がんなんだ」


「え…」


想像もしてなかった事を言われ、頭が真っ白になる。


肝臓がん…?


「お前に話さなくてはと思っていたが…先日会った時も話しそびれてしまった」


「う、嘘でしょ!?お母さんが!?いつ…がんだとわかったの!?」


「1年半ほど前…体調が悪かった母さんを検査して、がんが見つかった」


「そんなに前…」


お兄ちゃんがまだ生きていた頃だ…


「その時はまだ症状もあまりなく、元気でな。でも肝臓がんは症状がでにくい病気なんだ。母さんがショックを受けないよう告知しなかったが…私は裏で肝移植の準備を始めていた」


やっぱり…お兄ちゃんの手紙に書いてあった事と関係があるの?

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