今宵、君の翼で


お母さんになんて伝えたんだろう…



「俺が話してる間もずっとニコニコしててさ…『美羽をよろしくお願いします』って言われたよ」


「ほ、ほんとに…?」


「ああ。『あの子は相手のことを思いすぎて自分の気持ち言えない時があるから、そーいうところを気づいてあげてほしい』って」


「お母さんが…」


「まじで良い母ちゃんだよな…」


「うん…」


「あと動画を撮ってくれって言われてさ。自分が死んだら美羽に見せてくれって頼まれてた」


そう言って、翼は自分のスマホの画面を私に見せた。

そこに、やせ細った母の姿が映し出された。


「お、かあさ…」


母はキラキラした笑顔でこちらに手を振っている。


『美羽~!翼くんが来てくれたよ。すごくすごく素敵な彼氏ね…お母さん、びっくりしちゃった。翼くんと色々話して安心したよ。顔もかっこいいけど、中身もかっこいいんだもの』


動画の中で、プッと翼が笑った声がした。


私の知らない、母と翼だけの時間。

なんだか信じられない。

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